続・向健徳の野望 第三話
健徳達は必死に耐えていた。公孫淵による冷遇に。
公孫淵は以前からの家臣の賈範らを優遇していたが、健徳達はよそ者扱いされ、その上宗教を信仰していることから狂人扱いされていた。
しかし健徳達は逆に自分達を置いていてもらえる事に報いようと積極的に働いていた。
ある日の事である。領内の見回りをしていた陳竣はふと一人の民から話しかけられた。
「陳竣さま。お願いがあります。最近、この付近で虎が暴れまわっています。どうにかしてもらえないでしょうか?」
「よし、私がその虎を討ってやろう」
そう言うと民についていき、虎の住み家を兵達に調べさせた。案の定、すぐに住み家が見つかった。うまい具合に、中には虎がいる。
「弓を」
そう近侍の兵に言い、弓を受け取り、矢をつがえて構える。
ヒュッと風を切る音がし、虎の眉間に矢が命中し、絶命した。
後ろの民達は狂喜し、兵達はうまくいったことにほっと胸を撫で下ろす。陳竣は日々稽古を重ねていたため、彼の武力は上がりつつあった。
他の奉教信者の将達も仕事に努めていた。
そんなこんなで公孫淵の元に身を寄せてから数ヶ月たったある日、不意に鳥丸の軍勢が襄平に攻め寄せてきた。その数、4万。
襄平の兵力は2万5千。そのうち約3千は奉教信者である。
「て、敵の数は多いです。ここは篭城するべきでは?」
そう賈範が進言する。
「いや、我々客将の分際で今までなにも大きな手柄を立てておりませぬ、どうか我々に出撃をお許しください」
そう健徳が進言し、他の四将も頷く。
「うむ。その威勢、気に入った。お前らの旗下の3千に、さらに1万2千付け足してやる。1万5千で迎え撃て」
そう公孫淵が言う。実は健徳達を始末したかったのだ。
「はっ!!!」
健徳らは勇んで出陣した。
そして戦いが始まった。鳥丸はほぼ全てが騎兵で、健徳側はほぼ全てが歩兵であった。健徳は奉教信者達を前線に回し、自らも戦った。
「恐れすなわち敵なり!!!ひるまずかかれ!!!」
健徳にならい、奉教信者達は口々に「恐れすなわち敵なり」と叫びながら自らを奮い立たせ、部隊ごとに槍衾を組み、敵に突っ込んでいった。
孫明は敵兵、敵将を次々と薙ぎ倒し、陳竣は的確に兵達を率いて突撃し、法秀、鄧成の両名は後方より射撃し、味方を援護した。
しかし敵は味方の二倍以上、少しずつ押され始める。
「今こそ我が道術を使う時だな」
健徳はそうつぶやくと懐から芭蕉扇を取り出した。そしてそれを振る。
すると敵陣に数箇所、落雷が発生した。雷の音に鳥丸軍の馬は慌てふためき、そこに容赦なく健徳軍が突っ込んでくる。
「エェイ、コレデハ戦ニナランデハナイカ!!!全軍退却ダ!!!」
そう鳥丸の大王は言い、鳥丸の軍は退却した。
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